憲法-人権(人権総論②)

 こんにちは。今回も、前回に引き続き人権についてみていきたいと思います。前回が人権の享有主体の法人のところでしたので、その続きの外国人のところからみていきましょう。

 

人権の享有主体

 

⑵外国人

 

マクリーン事件(トップ中のトップで有名です)

[事案]

 アメリカ人のマクリーンさんが法務大臣に1年間の在留期間更新を申請したところ、在留期間中に政治活動を行なったことを理由に更新を拒否した。これを政治活動の自由の侵害して違法ではないかと訴えた。

[判決]

 憲法基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみをその対象しているものを除き、我が国に在留する外国人にも等しく及ぶ。

政治活動の自由は、我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないものをのを除き、その保証が及ぶ。

 外国人は我が国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものではない。

 

 ※マクリーン事件は、昭和63年、平成2年、4年、5年、6年、18年、23年、27年に出題されています。非常に出題回数が多いと感じられた方もいると思いますが、判例全部の知識が問われるわけではなく、一部抜粋して出題されています。例えば、23年では2段落目のところが理解できているか問われています。

 

 

Aは、日本国籍を有しない外国人であるが、出生以来日本に居住しており、永住資格を取得している。Aは、その居住する地域に密着して暮らす住民であれば、外国人であっても地方自治体の参政権を与えるべきであり、国が立法による参政権付与を怠ってきたのは違憲ではないか、と考えている。Aは、訴訟を起こして裁判所にあらためて憲法判断を求めることができないか、かつて行政書士試験を受けたことのある友人Bに相談したところ、Bは昔の受験勉強の記憶を頼りに、次の1~5の見解を述べた。このうち、最高裁判所判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 国民の選挙権の制限は、そのような制限なしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが著しく困難であると認められる場合でない限り、憲法上許されず、これは立法の不作為による場合であっても同様であると解されている。
  2. 国が立法を怠ってきたことの違憲性を裁判所に認定してもらうために、国家賠償法による国への損害賠償請求が行われることがあるが、最高裁はこれまで立法不作為を理由とした国家賠償請求は認容されないという立場をとっている。
  3. 憲法基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象とすると解されるものを除き、外国人にも等しく及ぶものと考えられており、政治活動の自由についても、外国人の地位にかんがみて相当でないものを除き外国人にも保障される。
  4. 憲法93条2項で地方公共団体の長や議会議員などを選挙することとされた「住民」とは、その地方公共団体に住所を有する日本国民のみを指している。
  5. 仮に立法によって外国人に対して地方参政権を認めることができるとしても、その実現は基本的に立法裁量の問題である。

 

 判決が3段落にわたり書かれていますが、それぞれ青字になっているところがポイントとなってきます。外国人の人権や、政治活動在留の権利に分けて書かれてありますので、それぞれの要旨を押さえながら読んでいくようにしましょう。

 

②森川キャサリーン事件(入国の自由)

[事案]

 日本に入国しているアメリカ人の森川キャサリーンさんが、韓国へ旅行するために再入国許可の申請をしたところ、不許可とされた。この処分が再入国の自由を侵害して違法でないかと争われた。

[判決]

 我が国に在留する外国人は憲法上外国へ一時旅行する自由を保障されているものではなく、再入国の自由も保証されない。

 

 ※この事件は、平成19年、27年に出題されています。なお、出国の自由は保障されることに注意してください。

 

塩見訴訟社会権

[事案]

 外国人が知事に対して障害福祉年金の請求を行ったところ、この請求が却下された。この却下処分が憲法14条(法の下の平等)、25条(生存権)に違反しないかが争われた。

[判決]

 社会保障上の施策において在留外国人をどのように扱うかについては、国は、特別の条約の存しない限り、その政治的判断により決定することができるのであり、その限られた財源の下ですく私的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人よりも優先的に扱うことも許される。

 

 ※塩見訴訟は平成19年、27年に出題されています。朝日訴訟生活保護の内容)、堀木訴訟(併給禁止)とならんで、有名な判例です。それぞれの名前が似ているため(全部苗字みたいなのでややこしい)入れ替えて出題されることもありますので、それぞれがどのような内容の訴訟なのか押さえておきましょう

 

④外国人の地方選挙権(参政権

[事案]

 外国人が地方公共団体の選挙人名簿に登録されていないことを不服として選挙管理委員会に異議の申し出をした。そこで、外国人にも地方選挙権が保証されるかが争われた。

[判決]

 憲法93条2項での「住民」とは地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味する。

 我が国に在留する外国人のうち永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と密接な関係を持つに至ったと認められるものについて、法律を持って、地方公共団体の長・議会の詩議員等に対する選挙権を付与することは、法律上禁止されているものではない。しかしながら、このような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策上の事柄であって、このような措置を講じないからと言って違憲の問題を生ずるものではない。

 

 ※この判例も、平成4年、12年、18年、19年、23年、に出題されており、有名な判例となっています。ポイントは、地方選挙権であること、選挙権を付与することは法律上禁止されていないということ、選挙権を与えなくても違憲ではないということです。

 よく、「地方公共団体の選挙権は外国人に保障されている×」などといった形で出題されますので、注意しておきましょう。

 

④外国人の公務就任権

[事案]

 外国人である東京都職員が管理職選考試験を受けようとしたところ、日本国籍を有していないことを理由に拒否された。これが憲法14条(法の下の平等)に違反するのではないか争われた。

[判決]

 地方公共団体が、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができるとする措置をとることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、このような措置は、憲法14条に違反するものではない。

 国の統治のあり方については国民が最終的な責任を負うべきものである以上、外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することは我が国の法体系の想定するところではない。

 

※この判例は平成19年に出題されました。十分出題が予想される判例ですので、「合理的な区別にあたり合憲」というところを押さえておけば大丈夫かと思います。

 

まとめ

 2記事に渡り、人権の享有主体をみていきました。憲法は暗記科目です。考えて解く問題などほとんどありませんし、国家公務員試験のように学説を問われる確率も低いです、よってこれらを学習する効率は極めて低いと言えます。

 したがって、この判例はこういう理由でこうだ!というふうに見た瞬間反射的に解けるようになるまで反復しましょう。もちろん時間との相談になってきますが、本試験では5問しか出題されないことも忘れずに取り組んでください。

 本当に考えてとかないといけない問題は、記述式や多肢選択で見たことのない、裁判官の補足意見に入る言葉を選ぶときや、一般知識ぐらいでしょうか。

 暗記するところはしっかり暗記して、過去問反応マシンになるつもりで、見た瞬間に反応で解けるようになるまで反復を重ねましょう。

 次回は人権の限界、人権の私人間効力(「しじんかん」効力です。「しにんげん」ではありません(笑))に入ります!

 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!