民法ー総則(権利の主体・客体①)
さて、民法に入りたいと思います。民法は私法の一般法と言われ、総則、物権、債権、親族、相続から成ります。一般法ってなに?と思うかもしれませんが、一般法の反対は特別法です。借地借家法や失火責任法、商法が民法の特別法です。
この辺りは勉強していくうちにわかっていくと思いますのでここでの説明は省略させていただきます。
さて、民法には三大原則があります。これは重要なので学習するときに頭に入れながら進めていきましょう。
①私的自治の原則 : 社会関係は自由な意思による相互拘束によって形成される
②所有権絶対の原則 : 個人は自己の所有財産を自由に使用・収益・処分できる
③過失責任の原則 : 損害賠償を負わされるには少なくとも過失がなければならない
しかし、これを貫いては不都合な場合があり、民法1条ではこれらの修正原理が書かれています。
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
いわゆる「公共の福祉」「信義則」「権利濫用の禁止」です。これらは非常によく出てきますので、利害が対立した場合にどちらを優先させたほうがいいのかなどのバランス感覚が大切になってくることを頭に入れて学習を進めていきましょう。
目次
権利能力
権利能力とは、権利義務の帰属主体となることができる資格です。これは、自然人と法人が有しており、シンプルに言えば「取引行為の主体として認められる資格」を言います。
私権の享有は出生に始まるのが原則です。つまり、人は生まれながらにして権利能力を有していますが、例外的に胎児に権利能力が認められる場合があり
①不法行為に基づく損害賠償請求
②相続
③遺贈
について胎児は既に生まれたものとみなされますが、生きて生まれてきた場合に、遡って権利能力を取得する「停止条件説」が通説です。(それぞれの意味については、債権、相続のところで学習していくことになります。)
したがって、法定代理人が出生前の胎児を代理することはできません。
また、権利能力は死亡によってのみ失われ、これ以外に権利能力が権利能力は失われる場合はありません。
失踪宣告
(概要)
失踪宣告とは、行方不明などによる生死不明者について家庭裁判所が死亡したものとみなして、その者の従来の住所における法律関係や財産関係を整理することを認める制度です。
たとえば、妻を残して行方不明になった夫の財産などでも、いくら家族だからといって妻は処分できませんので、このままでは妻は半永久的に夫の財産の管理を続けなければならず、不都合です。夫が死亡すれば相続などによって財産を処分できますが、行方不明者の死亡を証明することは不可能ですし、もしかしたらどこかで生きているかもしれません。
そこで、本人を死亡したものとみなして、生死不明前に暮らしていた生活圏で残ったままの法律関係を整理する制度が民法に設けられました。これが「失踪宣告」です。
では、どういった場合にどういう効果がもたらされるのかをみていきましょう。
(要件)
①普通失踪
[要件]
不在者の生死が7年間明らかでないこと。
[効果]
7年間の期間が満了したときに死亡したものとみなされる
②特別失踪
[要件]
戦地に臨むんだもの、沈没した船舶の中に在ったものその他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないとき
[効果]
危難が去ったときに死亡したものとみなされる
さらに2つとも利害関係人による失踪宣告の請求が必要です。また、検察官、裁判所は請求できません。
ポイントとなるのは、普通失踪の場合7年経過したときに死亡したものとみなされますが、特別失踪の場合、危難が去ったときに死亡したものとみなされます。両者がずれているので混同しないように注意してください。
(効果)
財産関係では相続が開始し、身分関係では婚姻の死亡解消となるので配偶者は再婚できるようになります。
失踪宣告は死亡の推定ではなく死亡の擬制です。 それゆえ、本人が生きて帰ってきてもそれだけでは宣告の効果は覆されず、宣告の取り消しを家庭裁判所に請求する必要があります。
また、前述しましたが失踪宣告によって失踪者の権利能力は失われません。したがって、その者が現在生活している場所で行った契約は有効です。
(失踪宣告の取り消し)
取り消しは失踪者が生存しているとき、宣告によって死亡とみなされた時と異なる時に死亡したことが証明された時のいずれかで、請求が可能です。
本人か利害関係人の請求が必要で、宣告と同様検察官や裁判所が職権で手続きに介入することはできません。
失踪宣告が取り消された場合、宣告は初めからなかったものとして扱われますが、失踪宣告後、取り消し前に善意でした行為には影響を及ぼしません。
ここでいう善意とは、行為者の当事者共に(行為者と受益者)善意である事を意味するので注意してください。
財産については
①善意の場合
現存利益のみ
②悪意の場合
取得した財産全部に利息を付して返還
という事になります。また、善意の場合でも浪費に使った場合と必要費に使った場合とで結果が分かれてきます。
例えば全額使った場合、浪費したのなら、現存利益なしとなり返還義務を負いませんが、必要費に当てたのなら現存利益ありとなり、返還義務を負います。
次回は行為能力に入っていきたいと思います。