民法ー総則(権利の主体・客体②)
行為能力
行為能力とは、単独で有効に法律行為を行いうる地位、能力のことを言います。反対に、単独で有効に法律行為を行うことができない者を制限行為能力者と言います。
制限行為能力者には、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4種類があります。では、それぞれの要件、効果などをみていきましょう。
未成年者は聞いなれていると思いますが、他の3つは聞いたことがあるでしょうか?
例えば認知症を例にとると、成年被後見人、被保佐人、被補助人の順に重度、中程度、軽度といったイメージを持ってもらうとわかりやすいと思います。
①未成年者
(概要)
未成年者はご存知の通り、20歳未満の者のことを指します。しかし、未成年者も婚姻をすればこれによって成年に達したものとみなされます。(成年擬制)
ただし、未成年の間に離婚しても制限行為能力者には戻りません。
(保護者)
保護者は、親権者または未成年後見人です。後者は、親権者がいない場合もしくは親権を剥奪された場合に付されます。いずれも法定代理人となります。
また、保護者には同意権、代理権、取消権、追認権が認められています。
(行為能力)
未成年者が法律行為をするには原則として、法定代理人の同意を得なければなりません。法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができます。
しかし、以下の3つの場合は法定代理人の同意を得ずにすることができます。
1.単に権利を得らまた義務を免れる行為
2.法定代理人が処分を許した財産の処分
3.許可された営業に関する行為
※弁済の受領は債権を失う行為に当たるので1に当たらない
②成年被後見人
(概要)
精神上の障害により、理事を弁識する能力を欠く状況にあるとして、家庭裁判所による後見開始を受けた者のことを言います。
(保護者)
保護者には成年後見人が付けられます。また、家庭裁判所は必要があると認めるときは請求により、または職権で後見監督人を選任することができます。
(行為能力)
法定代理人の同意の有無にかかわらず、原則として全ての法律行為を取り消すことができます。同意があっても取り消せます。なぜでしょうか?
そもそも同意とは、制限行為能力者の足りない部分を補うことです。60あったら 残りの40を同意で補ってあげます。しかし、成年被後見人はいくら持っているのかというと0です。残りの100を補ってあげる。これはもう同意ではなく代理となります。
またそもそも、成年被後見人には同意の意味がわからないというのもあるでしょう。
ただし、日用品の購入その他日常生活関する行為は取り消すことができません。
③被保佐人
(概要)
精神上の障害により、理事を弁識する能力が著しく不十分であるとして、家庭裁判所による保佐開始の審判を受けた者のことを言います。
(保護者)
保護者として保佐人が付されます。保佐人は同意権を有しますが、当然に代理権を有するわけではなく、本人や保佐人等の請求によって家庭裁判所が行った、特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができますが、本人の同意が必要です。
(行為能力)
法の列挙する行為(借財、保証、不動産の処分、贈与、訴訟、相続、家屋の新築その他大修繕など)について、保佐人の同意が必要です。列挙した法律行為は暗記する必要はありません。
保佐人の同意を得なければならない行為を同意を得ずにした場合、取り消すことができます。
日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消すことができません。
④被補助人
(概要)
精神上の障害により、理事を弁識する能力が不十分であるとして、家庭裁判所による補助開始の審判を受けた者のことを言います。
(保護者)
保護者として補助人が付されます。補助人は当然に同意権や代理権を有するわけではなく、同意権付与の審判、代理権付与の審判のいずれか又は双方がなされます。
代理権を付与する場合、被保佐人と同様本人の同意が必要です。
(行為能力)
補助人に対して代理権のみが付与された場合、被補助人の行為能力さ制限されませんが、同意を得なければならない行為であって、その同意を得ないでしたものは取り消すことができます。
まとめ
成年後見のところは問題ないと思います。理事弁識能力が無いので本人の同意はいりませんし、代理権は付与されます。補佐と補助で少し覚えにくいかもしれませんが、代理権は本人に代わって全ての行為を行う強力な権限なので、両方とも本人の同意が必要となっており、審判開始は本人の為に、法律行為を取り消せる画一的な基準である審判を付与する手続きですので補佐のみ必要となっている、という感じで覚えると覚えやすいと思います。
この表は上で説明したもののまとめになります。内容については、特に問題ないと思いますので暗記してしまいましょう。
また、後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人、被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る補佐開始、補助開始の審判を取り消さなければなりません。補佐開始、補助開始の場合も同様です。
そろそろ暗記することが多くなってきましたか?まだまだ条文で言えば19/1049条あたりです。一つ一つ取りこぼさずに、丁寧に進めていきましょう!
次回は制限行為能力者の相手方の保護に入りたいと思います。
では!